未来の戦場。兵士にとって,電装装置の破壊が死ともなりえる。生身の血を見ずとも,ネットワークが断絶されたときに流れる赤い血もある。まだ見ぬ戦場への憧憬,渦巻く。
米国陸軍第82エアボーン師団では6月から,「ランド・ウォーリア」システムが試用中だ。このシステムは,武器に付けられたビデオカメラで戦場の模様を仲間に送信したり,戦地の地形を呼び出すカーナビのようなものも持ち,ヘルメットのマイクロフォンで仲間と交信できる装置などを持っている。
戦場の仕組みが大きく変わったのを目の当たりにしたのは,91年の湾岸戦争の時だったろうか。どこにも兵士の姿などなく,地対空,空対地の弾道だけが行き交う。兵士同士の戦いを見ることはなく,目にするのはロケットの行き来と,せめて自律型哨戒車輛の姿だけだった。
だが,ベトナム戦争末期のゲリラ戦のような状態に陥ったときに,唯一頼れるのは,生身の兵士であることは,そんな現在の戦場であっても変わらない。狼のような野生と,ひたすら殺人兵器となることを意志とするサイボーグと,その両方を持つ人間。そこに潜むギャップを感じながら。デジタル情報を処理する闘争本能。シリコンチップと鉄に包まれた狼の実際。未来の戦場に,生身の狼が流す涙は,ありや。
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